2021.12.1号 No405 死傷事故発生直後――速やかにお見舞いを徹する――

■2021.12.1号 No405
死傷事故発生直後
速やかにお見舞いを徹する

2019年4月に東京池袋で車を暴走させ、母親と3歳の子どもを死亡させたなどとして過失運転致死傷の罪で実刑が確定した90歳の元被告が9月12日、東京拘置所に収容されました。今後、刑務所に移される見通しです。
この事故は、旧通産省の幹部だった元被告90歳が過失運転致死傷の罪に問われ禁錮5年の実刑判決が確定しました。法律上は健康に著しい影響がある場合や、70歳以上などの理由がある場合には検察官の判断で刑の執行を停止できるとされています。元高級官僚ということで現行犯逮捕されず、国民の怒りを買い、「上級国民」という言葉が急速に広まりました。
元被告は加害者家族の支援活動をするNPO団体の理事長を通じてコメントを出し、事故が自分の過失によるものだったという認識を初めて示したうえで、遺族や被害者に謝罪し「過失を反省するため刑に服してまいりたいと思っております」としています。一方、事故で妻と娘を亡くした遺族代表は「過失を認めたようですが『最初からこの言葉があれば』と、どうしても思ってしまいます。彼が収監されても世の中から交通事故がなくなるわけではありません。私は妻と娘の命を無駄にしたくありません。未来の命が守られることを心から願っています」などとコメントしています。2年半以上経過しても、なお人々の心から忘れられない悲惨な事故でした。
この事故で被告はブレーキとアクセルを踏み間違えた記憶はないと供述しましたが、これらのことをすべて解明できるのがEDR(イベント・データ・レコーダー)で、ACM(エアバッグ・コントロール・モジュール)内に装着された記録媒体、メモリーを解析して検察は証拠とし、科学的にも踏み間違いが証明されています。
東京地連道交法闘争では、「被害者に対してお見舞い等に徹し、真実に基づく供述をして、やっていないことは拒否することと現場検証を行い科学的な事実調査が重要」としています。この事件の被告は、被害者へのお見舞いが欠如しており、官僚出身のプライドから被害者遺族へ謝罪ができなかったことが最大の過ちです。

【東京地連・法対部】