2014.10.15号 No279 「剥離骨折」は重傷事故なのか 聴聞会で免許停止90日が減免に

■2014.10.15号 No279
「剥離骨折」は重傷事故なのか
聴聞会で免許停止90日が減免に

Dタクシーの乗務員、Iさん(43歳)は2014年5月30日22時16分頃、東京都文京区根津1丁目3の言問通りと不忍通りとの交差点手前で、お客様を降ろそうとしてドアを開けました。その時、Kさん(35歳)運転の自転車が接触し、右手の指を負傷してしまいました。
後日、警察に提出された診断書には手指の「剥離骨折」とあり、全治1ヵ月の重傷事故になりました。点数は10点が入力され、累積点数2点と合わせ12点となり、90日の免許停止対象です。
入力点数の中身は、Iさんが後方確認を怠ったと判断されたことによると考えられますが、相手の自転車がスポーツタイプの自転車で事故時にはかなりのスピードが出ていたことや街路灯が暗かったこと、自転車がペンライトの点滅式で確認しづらいなど問題点もあることから、90日の免許停止が重すぎるとして、組合では嘆願書を集めて聴聞会に備えました。
9月30日に、1,500人分の嘆願書を携え聴聞会に臨みました。30人ほどの聴聞対象者がいるなか、Kさんだけに委員長が補佐人として入りました。
聴聞会では、①Iさんが今回の事故を深く反省し、二度と事故を起こさず安全運転に徹することを誓っていること。②被害者Kさんへの気遣い。③山形で暮らしている病弱な母親と祖母の生活への多大な影響―を訴えるとともに、嘆願書を提出。さらに、聴聞官に対し診断書にある「剥離骨折」が医療の現場では爪も骨の一部とみなされ、「爪が剥がれた」ことを意味する医学表現であることを解説しました。
今回の事故の点数10点のうち9点が交通事故に係る付加点数の部分で、1点が一般違反行為(基礎点数)で後方安全不確認となっています。治療期間30日以上の重傷事故で責任がある場合に9点となりますが、「爪が剥がれた」ことで9点は厳しすぎるとを主張しました。聴聞会後の処分発表では、Kさんだけが減免され、免許停止90日が60日となり講習を受けて30日になりました。
説明と主張がなければ書類審査だけで決まってしまう行政処分。聴聞会の重要さが身にしみた事案でした。
【北部法対部】