2021.10.15号 No402 稼げればよいが大きな罠――安全運転が最優先――

■2021.10.15号 No402
稼げればよいが大きな罠
安全運転が最優先

Aさんは、Z交通に32才で入社。同僚からは、若年者の入社は久しぶりで人気者となりました。会社から稼げるよう教育され、順風満帆にスタートし、Aさんは、ベテランのSさんから組合に入っていないと、もしもの時に会社から一方的に攻撃されるからとの勧誘で加入しました。
会社は、稼ぐことに注力し、安全運転や思わぬ事故や労働時間管理を指導せず、帰庫遅れも見過ごす有様でAさんは、だんだんと天狗になっていきました。
3ヵ月を過ぎると空車走行中に反対車線で手を上げるお客様に気づき、そのままUターンし後方車両と接触事故を起こしました。幸いにも相手は、怪我がなく物損事故として処理され、ベテランSさんが今回は警告だと思って反省を促すと「会社は稼げば何も言わない。僕は、運転の腕も稼ぎの腕も良いから」と反論しました。同僚からも自己中心的と評され、友人も離れていきました。
満1年を迎えたある日、実車進行中、前方車両の速度が低下したので追い越しにかかると、横断中の通行人に気づき急停車するも間に合わず、乗客も強く頭を打つ重傷事故を起こしてしまいました。事故後の対応を何もできず立ち尽くすだけで、通行人などが119番と警察へ通報。我に返ったのは警官が駆けつけた後のことでした。
次の日、Aさんは「事故惹起者は使えないよ。さっさとロッカーを片付けて出て行ってくれ」と解雇通告され、慌てて組合事務所を訪ねたそこにSさんがおり、「A君は、稼げれば会社は何でも聞くと言ってたね。タクシー運転手は多摩川の砂利と言われ替えがいるんだよ。組合が会社と交渉するからしっかりと反省しなさい。そうでなくては、組合員は助けてくれないよ」と更正を促しました。
組合は「解雇の撤回、怪我をした被害者や乗客への謝罪、顧問弁護士を通じて刑事罰対応、行政処分対応」を行い、Aさんの免許証は組合員の署名で取り消しは免れました。 聴聞会では、Sさんが更正させることを聴聞官に訴えました。
Aさんは今年、入社10年目となりゴールド免許の交付を受けたそうです。
【西部ハイタク道対部】